昔から「父が薄毛だから自分も薄毛になる」や、「薄毛は遺伝によって起こる」などといったことがいわれてきましたが、本当に遺伝で薄毛になるのでしょうか?
そうだとしたら、遺伝によって薄毛になるメカニズムは一体どのようになっているのでしょうか?
今回は、昔からまことしやかに語り継がれてきた薄毛の遺伝について紐解いていきたいと思います。
■遺伝によって薄毛になるメカニズム
始めに、遺伝によって薄毛が起こるメカニズムについて解説します。
生活習慣は薄毛を招く原因の1つですが、生活習慣が良くないのに毛髪がフサフサしている人もいれば、健康的な生活を送っているのに薄毛に悩んでいる人もいます。
このような差が生じる最大の原因として、遺伝が考えられます。
男性型脱毛症であるAGAは、ジヒドロテストステロンという男性ホルモンによって引き起こされるといわれています。
毛髪には健康に成長するためのヘアサイクルがありますが、ジヒドロテストステロンはこのヘアサイクルに悪影響を及ぼし、毛髪が成長する期間を短くして、髪が成長する前に脱毛してしまい、毛髪も短く細くなってしまうことで薄毛が目立つようになります。
つまり、遺伝によって薄毛になりやすいメカニズムは、ジヒドロテストステロンの影響を受けやすい体質が遺伝しているかどうかだと考えることができます。
■薄毛のなりやすさは遺伝で決まる
薄毛になりやすいかどうかは、ジヒドロテストステロンの影響を受けやすい体質が遺伝しているかどうかだと述べましたが、頭皮にはAGAの原因となるジヒドロテストステロンに反応する受容体が存在しており、その受容体の感度は親の遺伝によって決まるとされています。
受容体の感度が低ければ、ジヒドロテストステロンが生成されたとしても比較的影響を受けにくいのでヘアサイクルは乱れにくく、あまり脱毛をせずに太い髪を保つことができます。
しかし、受容体の感度が高い場合はジヒドロテストステロンの影響を強く受けてしまいやすく、ヘアサイクルが乱れることで薄毛になる可能性があります。
以上のことから、人によって薄毛の進行具合に差があるのは、受容体の感度を左右する遺伝が大きく関係しているといえます。
■薄毛は父と母のどちらから遺伝する?
薄毛になるメカニズムが遺伝と深く関係していることが理解できたところで、多くの人が気になっていると思われる、父と母のどちらから薄毛が遺伝するのか触れていきたいと思います。
薄毛はイメージのせいで、昔から父から遺伝すると考えられる傾向が強い印象があります。
しかし実際は、薄毛は父だけでなく、母からも遺伝することがあるのです。
それは、男性ホルモンと結びつくことでジヒドロテストステロンを作り出す酵素である、5αリダクターゼと関係があります。
■薄毛は優性遺伝
男性ホルモンと結びつくことでジヒドロテストステロンを作り出す原因となる5αリダクターゼは、その活性度が高い体質が遺伝してしまうとAGAになりやすいと考えられています。
そして、5αリダクターゼの活性を持つ遺伝子は残念ながら優性遺伝であるため、父か母のどちらか一方がその遺伝子を持っていると、子供に遺伝してしまう確率が高いといえます。
これに加えて、ジヒドロテストステロンの受容体の感度が高い体質が遺伝してしまうと、ヘアサイクルが乱れやすい体質になることから、さらにAGAになる可能性が高くなってしまいます。
薄毛がまさかの優性遺伝というのはなかなかショッキングな内容だと思いますが、優性遺伝だからといって必ずしもAGAなどの薄毛が発症するわけではありません。
また、遺伝によってAGAなどの薄毛を発症してしまったとしても、薄毛治療や育毛剤などで改善していくことが可能です。
■薄毛の本当の原因を見極める
薄毛が遺伝によるものだといわれると、ついそこに目が行きがちですが、本当に遺伝が原因なのか見極める必要があります。
父方や母方にAGAなどの薄毛の人が少ない、もしくはいなければ、薄毛は遺伝によるものではなく悪い生活習慣によって引き起こされていることが考えられます。
髪が薄くなる本当の原因を見極めて、適切な薄毛対策を行うようにしましょう。